KOBE MEISTER

表具/相澤 吉範

昭和31年生 西区在住

勤務先:相澤楽山堂

日本古来の伝統美を守る表具の世界で、古式豊かな軸装、額装、衝立、屏風等の優れた技術を有する。一方で、今の時代に活躍する書作家等の作品展用の表装にかけては第一人者と評価される。

展覧会用の額装、軸装は作家の作品価値を高めるためのもの。
やり直しはできず、納期の遅れも許されない。
時間との戦いの中で技術の冴えが要求される陰の立役者。

展覧会用の額装を手がける相澤さん 晴れやかな展覧会場で、観客の注目を集める書作家の大きな作品。それを横からそっと見守る人がいる。作品の額装、軸装を担当するプロフェッショナル、表具師の相澤さんだ。作家から預かった作品の周囲に別の紙や織物を合わせ、額に入れて仕上げることを額装といい、掛け軸の形に仕上げることを軸装という。作品を囲む紙や織物は、作品の魅力を引き立たせることが役割であり、作品より目立ってはならない。この選定には材料を選ぶセンスや、色彩感覚が求められる。まさに「作品に衣装を着せる」作業といえる。
 家業として表具師という仕事に就いたわけではなく、玉木楽山堂のアルバイトから始まった相澤さん。「仕事は見て覚えるという時代でしたが、この仕事は私の性に合っていました」。10年の修行期間を経て、一人前となり独立。独立してから得た知識もたくさんあり、また新たな技術も身に付けていった。独立した当初は全く得意客もおらず、ゼロからのスタートだったが、ひたすらに下請けをこなし、経験と実績を積み上げた。やがて地道に続けてきた努力は実を結び、社中の紹介で得意客がつくようになった。人柄に加えて確かな腕も買われ、作家たちからの信望も厚い。そのため、店の看板を掲げていなくても、展覧会出展を目指した多くの書作家らが作品の表装依頼に訪れている。決められた納期の中で作業を行うのは大変だが、「自分がイメージした通りに作品が仕上がっていくのは楽しいですし、それが作家の方々に認められるのは嬉しいです」と相澤さんは語る。 表装美術展に出展した軸装
 作家が丹精込めて書き上げた作品を見極めて、作品を補強するため、裏に和紙を貼り付ける「裏打ち」を行う。作品のシワやたるみを伸ばすため、作品全体に水を吹きかけるのだが、作品に使われている墨の種類によっては水でにじむものもあるため、細心の注意を払う。額装の場合、水を吹きかけた作品の縁周り1センチほどに糊をつけ、湿った状態のままマットに貼り付ける。その際に糊付けした範囲は、していない部分より先に乾かなければならない。糊が乾いて固まる前に、内側の糊付けをしていない部分が先に乾いてしまうと、紙の収縮により作品がマットからはがれてしまうのだ。吹きかける水や糊のさじ加減など、表装に必要な様々な技術に、作品と合わせる紙や織物選びのセンスも全て、長い年月の中で培った経験から磨かれてきた。相澤さんの熟練した技は今日も作品価値を高め、彩りを添えていく。

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