KOBE MEISTER

硝子施工/森本 雅彦

昭和28年生 兵庫区在住

勤務先:(有)モリモトマサ硝子

ガラスは人間そのものと心得てTPOに応じた設計から施工までを個性豊かにこなす。

ガラスの長所と短所を個々の建造物に活かす特有の技法を評価。震災の犠牲者を追悼する「希望のあかり」ガラスケースも手がける。

自作のガラスオブジェを手入れする森本雅彦さん 新開地近くのモリモトマサ硝子といえば、「ああ、あのガラスホールの?」と声が返ってくる。自社ビルの1階から2階部分にかけて、ドーンとはめ込まれた大きなガラス。ガラス壁で囲まれた音楽ホールは、趣味で楽器を演奏している森本さんが、仕事の技術を活かして作ったものだ。音楽のプロとも相談し、ガラスや木で様々な形の反射板を設置。音響機器の必要がない計算しつくされた音楽ホールは、知る人ぞ知る存在になっている。天井高4メートルもある広々としたホールの中で、ひときわ目を引くのがガラスの板を波形に積み上げたオブジェだ。床から天井まで重ねられたガラス板には接着剤が使われておらず、要所要所の金具だけで固定されている。「接着剤を使わない方が綺麗な見た目になるので、ガラスの重みだけで安定するようにデザインしました」。
 オシャレでスタイリッシュなガラス施工をモットーとする森本さん。ビルにガラス庇の装着を依頼された際には、サポートポールを使わずに、スッキリした外観の強化ガラス製庇を取り付けた。サポートポールとは、建物とガラス庇を繋ぐ金属製の棒で、ガラス庇を固定する役目がある。多くの場合でサポートポールが使用されるが、森本さんは金物でガラス庇を建物に差し込む方法を用いた。取り付けに使用した金物も、強化ガラスに合わせて森本さんが考案したものだ。それぞれのガラスがもつ特性を理解し、ガラスの扱い方を熟知している森本さんだからこそ、なせる技だといえる。また、森本さんはオブジェや実用的なガラスだけでなく、東遊園地にある「1.17 希望の灯り」のガラスケースも手がけている。1995年1月17日、神戸を襲った大地震、阪神・淡路大震災。ご遺族の方々の希望を受け、「生きている証」として灯されたあかり。その大切なあかりをガラスケースが雨風からしっかりと守っている。「万が一のときに備えて、全く同じガラスケースをストックしてあり、すぐ現場に設置できるようにしています」と語る森本さん。危機管理も万全だ。
森本さんが手がけた「希望の灯り」のガラスケース 森本さんの創造力は多岐にわたり、ガラス施工から派生して、電源いらずの木製スピーカーまで作り出すに至っている。「材料の加工や設計はガラスも木も同じです。ただ、ガラスは現場で加工できない分、製造誤差も計算しながら設計図を作っています」。スピーカーを自作してしまうほど音楽好きの森本さんは、ガラス張りの音楽ホールを作ったのにも意図があると言う。「施工業者というと、キツイ・汚い・危険というイメージを持つ方もいらっしゃると思います。そのイメージを払拭するため、綺麗でオシャレなガラス張りの音楽ホールを作りました。次世代を担う若者がここに集まり、その中からガラスにも興味を持ってくれる人が現れるのを期待しています」。
 日常で数多く見かけ、建物には欠かせないガラス。「ガラスは人間と同じです。弱い一面もあれば、強い一面もある。良いところもあれば、悪いところもある。長所も短所も踏まえ上で、適材適所で使えば素晴らしい力を発揮することができます」。これからも森本さんのガラスは、あらゆる場所で輝いていく。

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