KOBE MEISTER

造園/榊原 一敏 

昭和23年生 垂水区在住

勤務先:(有)榊原樹園

樹木、岩石などの自然素材をたくみに活かして、限られた環境を美しく造成、整備し、石木に命を宿らせる。

広大な借景庭園から坪庭まで。条件に合わせた作庭技術で、見る人に四季の風情を実感させる心の表現。

榊原 一敏さん 1木1石1草――これだけあれば、坪庭が造られると榊原さんは言う。最低限度の自然素材であっても、そぎ落とされた美の極致を坪庭として表現出来ると榊原さんならではのやり口だ。それには、それなりの自然素材を活かす実力が要求されることは言うまでもない。彼の造園にかける情熱は一種の哲学にも等しい。「真の庭、行の庭、草の庭」に象徴される基本技法を踏まえ、築山庭、平庭から茶庭、借景庭に至るまで、さまざまな庭園づくりに彼一流の真価を発揮する。「秘訣は、石を知り、木を愛することですよ」。
 おだやかな笑顔の目が険しい光を放つのは、もの言わぬ石と対話する時。大自然がはぐくんだ石の表面、つまり野面(のづら)を活かした野面積み技法においていかんなく持てる力を発揮する。「そのために表面を綺麗に細工するのではなく、自然のままの風合いを活かして、石と石を組み合わせて石垣として積み上げて行くのです」。半永久的に石垣としての役目を果たすには、石同士を土で固めていくことがかんじん。その辺のコツを「石同士が三点噛み合うように積むことです。一点だけではぐらついて形が崩れてしまいます」と語る。一つの石の下と、横左右の計三点がしっかりと支え合うように、バールで調整しながら組み合わせて行く。表面から見ると平たい石のように見えるが、実は、想像以上に裏の部分が三角状に長くなっていて、そこに土を詰めて、ゆらぐことのないように固定するのである。「この土締めによって何十年、いや何百年と石垣を持たせるわけですからね。見えない部分こそ手が抜けません」。城の石垣がその何よりもの好例である。名城と言われる城はすべからく堅固な石垣あってこそ、その姿を現代に伝えて、歴史の重みを実感させて人々に感動を与える。
六甲山を表現した屋敷堀の写真 今を生きる私たちの生活における造園の具体的な仕事としては、築山庭、平庭、茶庭、借景庭などさまざま。そんな現代の住宅事情を反映して、ちょっとした面積を活用しての坪庭の需要が増加の傾向にあるという。「空間のまま放置すると味気ないですが、それに見合った石、木、草で庭として生まれ変えさせれば、住まいの価値が高まるうえ、住む人の気持ちも安らぎますし、お客を迎えても絆の深まりに役立ちます」。ある種の生活コンサルタントのような精神で本来の役割を果たす。狭小庭園では遠近法を用いて広がりを表現し、里山を縮尺した箱庭では自然との共生の重要性をイベント会場で訴えるなど社会派としての活動にも積極的。立地条件に基づいて、植物の生態を熟知したうえで、設計、施工と卓越した技能をいかんなく発揮する現代センスの持ち主でもある。父・敏夫さんを継承した二代目が、息子・貴光さん、三代目の支えを得て、益々意気軒昂。

ページの先頭へ戻る