KOBE MEISTER

自動車板金 / 石井 勝久

昭和25年生 北区在住

勤務先:(株)旭星自動車

トラブルによって傷ついた自動車のボディーを自ら開発した専用工具を駆使して復元する技術に秀でている。

歪み抜き、縛り技術をフルに駆使するための木製ハンマーと当て板・ドリーを開発。板金に加え塗装にも精通し、新素材の車体にも実力をいかんなく発揮する。

石井勝久さんの写真  事故や思いがけないトラブルで傷ついた 車のボディを元通り修復するのが石井勝久さんの役目だ。まず、損傷診断から仕事を始める。「事故のありさまを見極め、いかに対処するか、その対応策を考えます」。初期診断を間違えると大変なことになる。事故の原因をつきとめ、修復箇所の寸法を測定する
 修理作業にとりかかる前の準備として、部品の取り外しを行って、フレーム修正機に修理車両を固定する。ここからが石井さんならではの真価を発揮する時だ。プロの間でも修理が難しいとされる0.6ミリの高張力鋼板の歪みをハンマーとドリーを巧みに使って修復する「歪み抜き技術」に石井さんは秀でている。 鋼板によって作られている車体は、修正の過程においてかなりの歪みが発生するものだが、これを直すための「打ち出し技術」が石井さんの創意工夫による独特の手法だ。そのやり口を具体的に説明すると、こうだ。損傷した場所を板金用のハンマーと当て板のドリーを操ってコツコツとミリ単位の手仕事を進めて行く。 このハンマーを知人の木工師に特別に作ってもらった。「堅い木がいいのです。堅いのに木特有の弾力性がモノを言って、金属の歪みの修正に威力を発揮します」。特製ハンマーの上部の細い先端部分を主に使うところが意表をつく。「徐々に徐々に、神経をとぎすましてゆがんだ鋼板に打ち付けて行き、 無理して鋼板を逆に痛み付けてしまわないように、気配りしながら歪みを修正していくんです」。金属を叩くとその部分が伸びて反対方向が縮むという原理を知り尽くし、微妙な手加減で車体の損傷箇所を現状復帰させる。同様に金属の絞り込み技術も応用する。石井さん流のこれらの技術をより完璧なものにする小道具として、 金属の性質とその習性を知り尽くした石井さんならではの立体作品当て板のドリーも特有のものを開発している。「叩くことも大事ですが、それをしっかりと受け止めて、凹凸をムラなく無くすための隠れた工夫もしています」と職人わざの秘訣を吐露する。 近年、自動車業界はモノコックボディ化によって、車体素材が新開発され、高張力鋼板いわゆるハイテン材は叩き過ぎると割れたり、歪みが大きくなりやすいため、そういう場にも対応出来、「広い面」で使用出来る「木製ハンマーとドリー」も開発した。
 車体の復元では、板金に続く塗装が不可欠だが、日々進化する塗料事情に精通し、明暗いろいろな条件下で違和感なく修復箇所が分からなくなる塗装技術を有している。 「一台の車に数多くのコンピュータが搭載され、パーツごとそっくり交換修理する今の時代でも、人間の手でしか出来ない部分があるんです。それが私の仕事です」。板金、塗装の両部門を一貫処理する能力は作業工程の短縮と作業の合理化も実現し、業界の模範的存在としても貢献している。

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