KOBE MEISTER

理容 / 緒方 房義

昭和22年生 東灘区在住

勤務先:ヘアーサロン おがた

くせ毛をレーザーカットで直す技術をはじめ、頭髪の形状にマッチさせたソフトヘアなどに腕の冴えを。優れた技術を後進にも伝授。

毛先を削り、くせを直す微妙なテクニック

緒方房義さんの写真  天然パーマなどのくせ毛をスキャルプチュアカットと呼ばれるレザーカットで処理する技術には目を見張らされる。研ぎ澄まされた何本ものカミソリの中からその場面に応じた一本を選び、あざやかな手さばきで前回の調髪以後伸びた分を削ぎ落としていく。スピーディーにどんどん削いでいくが、実は緒方さんの頭の中では緻密な計算がなされている。「毛先の角度まで考えてカットしています。失敗すると段差がついたり、自然さがなくなったりしますからね」毛先を削り、くせを直すーーその微妙なテクニックをいかんなく発揮するには「カミソリを研ぐ時に、刃の角度を鈍刃(どんば)にするんです」と、名人芸ならではの工夫をする。「散髪される側にとっては切られた髪がかたまって落ちたり、顔にかかったりしたのでは快い時間が台無しですからね」。鋏のカット技術においても、頭髪の部位によって刃の傾斜角度を変えた鋏を用いて、切られた髪が整髪されている人に被らないよう研究した独自の技術を駆使する。
 また、パーマ技術では、低温によるアイロンパーマ技術を用い、薬液を考慮しながら、毛髪へのダメージを少なくする。その人の頭髪の形状にマッチさせたソフトヘアがみごとに仕上っていく。コツは「丸いものに丸いものを乗せることを十分わきまえて対処すること」。
 調髪の時間は美しくなるためのひとときであると共に、精神的癒しの時間でもあると考えて、髭剃りに関しても、日本カミソリをたくみに使い分けて、鳥の羽で撫でられるような心地よい気分に導きながら、髭剃りを進める。
 店にはレギュラーコーヒーの香りさえ漂って、調髪を終えた客がテーブルでくつろぐ姿も。サービス業にも徹している緒方さんはまさにこの仕事がうってつけだが、業界入りのきっかけは「伯母が魚崎で美容室をやっていて、彼女を頼って長崎から神戸に来ました」。昭和38年、住吉の中川雅次さんに弟子入りし、高度なテクニックを叩き込まれた。「いい師匠との出会いが私を成長させてくれました。技能はまさに人なり、ということをひしひしと実感した修行時代でした」。昭和47年に独立後も、師弟の絆を大切にし、多くを学び続けた。
理容後の写真 平成5年に師匠が神戸マイスターとなり、社会的にも理容の地位を高めることの重要さを再認識して自らも切磋琢磨した。師匠が故人となって、緒方さんが後進を指導する役目となったが、優れた技術は惜しみなく、人に伝授することが業界の盛り上げにつながると心得て、意欲を燃やした。兵庫県理容組合の講師のほか、若手理容師の技術研究団体「神戸エキスパートクラブ」でも指導し、技と心を兼ね備えた人材の育成に余暇を捧げる。「道具の発展によって技術が劣るようでは駄目です。いかに替え刃が全盛の今でもカミソリを自分で研いで腕を磨く原点を忘れぬ心意気を大切にしてこそ、ほんものの理容師だ」と言い切る。

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