KOBE MEISTER

和裁 / 小島 敬孝

昭和15年生 東灘区在住

勤務先:甲南和裁

「不器用でも、真面目にやっていたら、きっと道が開ける。あきらめてはいけない」この気持ち一本でやってきた。

創意工夫の技を一針一針に

小島敬孝さんの写真  和裁ひと筋45年、祖父が創業の三代目。7人きょうだいのまん中の次男。身長は176cmと大きくなったが、幼少のころは運動が苦手だった。 「何か一つくらい得意なものを」と、中学校で卓球部に入り、インター杯に出場するほど強い選手になった。高校を卒業するころ、和裁二代目の父が寂しそうだった。既に兄は中学校の教師になり、跡を継ぐのは自分しかいないと敬孝さんは思い、この道に進むことを決心した。
 女性たちが自分より早く上達する姿を見て、発憤した。そこで冒頭の座右の銘が実行された。人一倍の苦労を積み、修練の場を自ら求め続けた。「色々な知識と技術を身に付けたいと思い、兵庫県下だけでなく、大阪、名古屋、京都など各地の講習会に参加して勉強しました。なかにはもう会費は要らないからしっかり身に付けて帰りなさいと、励ましてくれる人もいましたよ」と、無我夢中で修行した当時を述懐する。こうして身に付けたのが、和裁技能で最も高度な技能とされる花嫁衣裳の打ち掛けの「太ふき」製作技法。独自の研究を重ね、真綿を撚って芯にして仕上げる方法を考案した。
 また、「巻き縫い」技法はまさに得意中の秘伝とさえなった。それは、下に着る着物の模様を透かせて見せるコートに用いる技法で、縫い込みを極度に細くするのがポイント。前立て衿も、通常は二重のところを一枚で仕上げる。つまり、縫い目が表に見えないようにする縫製法でこの技法を修得している者は業界でも数少ないとされる。小島さんが卓越した技能保持者と高く評価される理由の一つとなっている。「反物は一端切ってしまえば、とり返しがつかないので、事前に周到な計算と準備が必要なんです」と、コツを伝授する。
小島さんの作品「3枚の布を使ってみごと模様も合わせて仕上げた刺繍入り振袖」の写真 男物仕立ての技能研鑽にも努め、江戸時代から伝えられる「箱襠(はこまち)」の技法も小島さんの自慢の裏技。襠の上と袖付けを開いて身幅を広くし、力士や肥満の人にも着やすい羽織を仕立てる。この技能を継承している人は全国でも希有といわれる。
 旧労働省の教科書「新版和服裁縫」の執筆陣にも名を連ねているほか、自社内外において多数の後進の育成にも貢献。六甲おろしが静かに街を包む環境のもと、元妹弟子であった妻女と力合わせて日本の伝統衣裳を守る意欲をふつふつとたぎらせ続けて今を生きるプロ中のプロだ。

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