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紳士服 / 佐伯博史 昭和16年生 兵庫区在住
勤務先テーラー佐伯

全国技能グランプリ優勝の実績を持ち、特にタキシード縫製の拝絹掛けに卓越。

人生を一針一針縫い込んで
佐伯博史さん  一着の洋服を作るのに採寸、製図、裁断、縫製など270近くもの作業工程があるという。「布は生きものですからその性質をよく理解しながら作りあげていくんです」と、そのコツを語る。ハサミダコやアイロンダコのできた手がまるで魔法のように一枚の布をあやつる。
 佐伯さんは広島県神石郡の出身で、定時制高校に通いながら洋服店に仕立見習いとして入ったのが、この道に進むきっかけ。「いい仕事をするには流行の先端をいく地でと思い、神戸にやってきました。」独立したのは47歳。その前年の昭和61年に全国技能グランプリで優勝した実績の持ち主だけに彼が手がける洋服は、気品、格調、優雅さの三拍子を兼ね備えていると評価されている。
 「いい洋服づくりのポイントは、まず、その人の体格に合わせて生地を選ぶことから始まります。お客とじゅうぶんに対話しながら、デザインを決め、作業を進めていきますが、縫製の段階ではゆとりを持たせて、3cmを限度に重ねをするのが秘訣なんです」と、プロの極意を気さくに明かす。
 紳士服のなかでもひときわ難しいとされるタキシードの縫製で佐伯さんはとくに拝絹(襟の部分の絹布)の仕上げと、バランスの基本になる袖付けの技術の高さで定評がある。「繊細な絹を扱うものですから、傷つけないよう気をつけたり、手でていねいに折りながら仕上げたり・・・いたわりながら作り上げていくんです。」
 洋服を愛する心を実技講習会の講師として全国に広める。作る人と着る人の人生の織り合いを一針一針ずつ縫い込む佐伯さんだ。